幸せはどこに……

大審問官の功罪

田邉一廣 著


ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』に挿入された〈大審問官〉の叙事詩は、なぜこれほどまでに、時代を超えて読み継がれてきたのだろうか。

本書『幸せはどこに…… 大審問官の功罪』は、〈大審問官〉と沈黙するイエスの対話を手がかりに、「人は何によって幸福になるのか」「自由は人を幸せにするのか」という問いを、現代の私たちの足元へと引き寄せていく思索の書である。

大審問官は言う。
人は自由よりも、パンと奇跡と権威を求めるのだ、と。
それに対してイエスは、最後まで沈黙を貫く。

著者はこの沈黙を、単なる否定や敗北としてではなく、読む者それぞれに委ねられた問いとして受け止める。
科学文明、資本主義、合理性が進んだ現代社会は、はたして人間を幸福にしてきたのか。
それとも、私たちは知らぬ間に別の「大審問官」の論理を生きてはいないだろうか。

本書は答えを与えない。
むしろ、安易な結論を拒み続ける。
読み終えたあとに残るのは、
「納得しきれなさ」と「割り切れなさ」、そして、自分自身に向けて返ってくる問いである。

自由と幸福のあいだで揺れるすべての読者へ。
〈大審問官〉の物語を、いま一度、私たち自身の問題として読み直すための一冊。

【著者プロフィール】

田邉 一廣(たなべ かずひろ)

著書
「鎮魂の海」(2015 龍書房)
「カチューシャの哀しみ」(2017 龍書房)
「アンナ・カレニーナの愛を超えて」(2018 文芸社)
「幸福の絆」(2020 文芸社)
「ゴッホとゴーギャンに魅せられて」(2020 22世紀アート)
「小説 コロナ」(2020 22世紀アート)
「わたしのデカメロン」(2021 22世紀アート)
「愛こそ命 トルストイの歩んだ生涯」(2021 22世紀アート)
「プーチンへの答え 戦争から平和への道」(2022 22世紀アート)
「我々は何者か、どこから来て、どこへ行くのか」(2023 22世紀アート)
「ドン・キホーテ2世」(2023 22世紀アート)
「平和憲法を守ろう」(2024 22世紀アート)
「夢と希望をありがとう 九十九里浜」(2024 龍書房)
「人生さまざま」(2024 龍書房)
「大審問官の功罪 幸せはどこに……」(2025 龍書房)
「夢の浮き橋 光源氏とゲーテをめぐる女性たち」(2025 龍書房)

〔書籍情報〕
Kindle版
出版日:2025年12月25日
価格:880円(税込)
リフロー型